
梅雨の重たい空の合間、つかの間の晴天に恵まれた休日だった。
しばらく続いた雨が埃っぽい大気を洗い流し、
抜けるような青空が頭上に広がっていた。

こんな日は緑に囲まれて釣りをしようじゃないか。
ここ最近はメインストリームでの遡上系のアマゴや鱒、ヤマメの釣りをしていたので正直、渓流がとてつもなく恋しくなっていたのだ。
午前中にとある支流で、いわゆる渓流の大型アマゴに的を絞った釣りをした後に、以前から気になっていた谷を釣り歩く贅沢コースだ。
広々とした渓流で六フィートを振った後、五フィートに持ち替え、川から川へ数十キロの大移動。
いくつか峠を越え、谷の入口まで到着したのがお昼前だった。
『そんなに奥までは行けないな。』
大体が、あれもこれもと欲張りるぎるんだよ!
と自分自身に突っ込みを入れながら釣り上ると、淵尻の底に群れている魚達が目に入った。
婚姻色の入ったウグイの群れだ。
こいつらも産卵場所を求め本流から上ってきたんだな。
やっぱり堰堤が無いという事は素晴らしい事で、これが本来の河川の自然な姿だとしみじみ思った。
防災も大事だが堰堤を乱立させる事が本当に防災だろうか?
ダムもそう。

素人考えかもしれないが、それらのお金を山の保全や広葉樹の植林などに回し、森の体力を上げる事で天災に強い環境が育まれていき、ひいては防災に繋がるのではないだろうか?
もちろんすぐに効果は出ないかもしれないが。

谷を歩きながら時折足元から大きな黒い影が走った。
一瞬、大岩魚かとも思ったがよく目を凝らすとニゴイであった。
このロケーションでニゴイかぁ(笑)
でも、これが自然なのだろう。
コイ科の魚達には産卵前なので遠慮してもらいつつ本命のアマゴを探していく。


要所要所で釣れるアマゴ達は一匹一匹雰囲気が違っていた。


これも自然の姿。
この谷の共通点としては白地の肌に濃いパーマーク。

魚によっては黒点が虫食いの様に繋がっているものもいた。

ファインダー越しのその姿は水の透明感と相まって本当に美しい。


さながら水中の迷彩柄だ。

そんな彼らをもっと写真におさめたかったのだが、夏至を過ぎたばかりだというのに4時を過ぎた時点で谷には日が射さなくなってきた。
写りが微妙になってきたぞ。
先に見える渓相はとても魅力的だが、そろそろ引き返さないと真っ暗になるので後ろ髪引かれつつ谷を下りる事に。
贅沢コースとか言いながらメインディッシュを食べ損ねた気分、次は前菜無しで訪れよう。
そう念じて谷を後にしたのであった。
つづく